Menuを右にスクロールすると水彩ギャラリー、人気記事、自己紹介ボタンが出ます。

縦でも横でもない、不思議なつながり。「大家さんと僕」

縦でも横でもない、不思議なつながり。「大家さんと僕」

 カラテカ、矢部さんが描いた「大家さんと僕」を買いました。

以前から話題になっていて気になっていたのだけど、24時間テレビで矢部さんが、大家さんが亡くなったことを涙ながらに報告していたのを見て・・・

いつもひょうひょうとしていて、水分が感じられないと思っていた矢部さんが涙で顔をぐちゃぐちゃにしていて、

「ああ、本当に大家さんと強いつながりがあったんだな・・・」と心動かされ。

それで読みたくなったんです。

中はモノクロの4コマ漫画。

部屋を探していた矢部さんが、不動産屋さんに紹介されて大家さんの家の2階に住むことになったことで始まります。

普通は大家さんと賃貸人は、経済的なつながりしかないんですが、大家さんはけっこう矢部さんの生活にグイグイ入ってくる。

たとえば、洗濯物を干しっぱなしにしていたら勝手に部屋に入り畳んでくれていたり。

・・・ちょっとゾッとしますよね。(実際に矢部さんもゾッとしてた)

でも、矢部さんのとまどいにおかまいなしの大家さんと一緒に食事したりお茶したりしているうちに、温かいつながりができてきます。

 

読んでいてふと思いました。

今、大体の人が「親子・親戚」「先輩・後輩」「上司・部下」の縦関係だったり、「先生・生徒」「友達」「恋人・夫婦」の横関係しか交流ないんじゃないかな?

「大家さんと店子(賃貸人)」も一応「縦の関係」に入るのかな・・・。

いや、「関係」よりも「契約」という方が当てはまる気がする。

でも大家さんと矢部さんはどの関係性にも当てはまらない、「人と人」「個と個」という感じ。

ちなみに大家さんと矢部さんは48歳離れていて、親子よりは少し離れているけどおばあちゃんと孫ってほどでもない。

一番交流がないといっても過言じゃない年齢差!

縦でも横でもない不思議なつながりだけど、なんだかお互いしっくりくる相手だった。

そこがすごく、いいなぁ・・・。

今はSNSなどで違う次元で交流を持てるようになっているけど、それでもつながるのはだいたいが同じバックボーン・世代とか、趣味や興味が一緒の人。

もしくはギブ&テイクの関係。

でも、「大家さんと僕」って生きてきた背景も違うし、趣味も違う。

本当なら「話が合わない!」で終わりなんですが、矢部さんはそこから、いろいろなものをすくい取る。

いやむしろ、全然違うからこそ、気付かされるんだろうなと思う。

そしてそういうつながりは、一緒に過ごして、言葉以外の色々な交流を経た上でしか成り立たない。

 

そしてこの漫画でちょっと驚いたのが、「お年寄り」の大家さんが、全く「関係性」にとらわれない柔軟さを持っていること。

 ある意味、内面では今どきの若者よりも自由かもしれない。 

素敵だなぁ。

 

そして矢部さんも・・・

確かにこの大家さんは最高のキャラクターだけど、矢部さんの滲み出る人間性もじんわりした。

以前から、前へ前へ出ることが最優先とされている芸人の世界で、居心地悪そうにしている姿は「お笑いに向いていない」ように見えてました。

そして本の中でそんな自分に悩んでいる。

恋愛もうまくいかない。

そんな日々の中でスレていきそうなものだけど、落ちこみながらも持ち続ける真っ直ぐさ。

特に芸能界みたいに競争が激しいところじゃ毎日誰を押しのけて自分が前に出るかって感じだろう。

その中で真面目にひっそり生きてたって、誰も見てくれないよね。

ごまかしとか割り切りとか演技とか・・・

生きていく上でみんなやっていくようになっていくことが出来ない不器用さが身に沁みた。

でも、一見おじいさんみたいに見える姿の中に熱い心を感じて、ジーンときてしまった。

そしてそれだけではなく、コマの進め方とか、笑いのセンスとか、今まで矢部さんを面白いと思ったことがなかった(失礼!)けど、こんなに多彩な感情をユーモアで届けてくれる人だったんだ!

だけど矢部さんのお父さんは絵本・造形作家であり、矢部さんも子供のころから作品を作ったり新聞を作っていたらしいのです。

 ああ・・・やっぱり。

大家さんというキャラクターの面白さだけで読ませるのではない、しっかりした構成力やテンポは、昨日今日で作られているわけじゃないんだな。

 

さてこの漫画は私と姉妹だけでなく、普段本を読まないダンナも、ほぼ「おしりたんてい」しか読まない長男も読みました。

ところどころ漢字が出てくるので、長男が「これ、なんて読むの?」と聞いてきたのでいちいち教える。

・・・こんな風に本読んだことなかったのでは?

読めない漢字が出てきても読みたくなる漫画なんだね。

 

大人にはちょっと切なさも感じるけど、長男はただ笑っていました。

一番印象に残ったのは大家さんの

87歳の夏は今しかないですものね

というセリフ。

「平成最後の夏」なんて騒がれていたけど、それを言うなら毎年が最初で最後のその年。

今日も今日だけ、なんですよね。

「ほっこりする」というより、人と人との出会いの不思議さと可能性に、あらためて気付かされた本でした。

読みたくなった方はこちら↓

大家さんと僕(Amazon)

 

大家さんと僕(Apple 端末)

この記事をシェアする

カルチャーカテゴリの最新記事