さくらももこさんのエッセイ「そういうふうにできている」を読みました。
さくらさんの妊娠中の心と体の変化、そして出産後までを綴った本です。
最初は初めての妊娠や出産のことや子供のことをのみを書いているのかと思っていました。
でも、妊娠という特殊な環境に置かれながらも客観的に自分自身を観察しているのが面白い!
何箇所か「なるほど」とか「そうそう、私もそう思ってた!」と深くうなずきました。
最初・・・仕事が多忙だったさくらさんは「子供を持たない人生もいいかな・・・」と漠然と考えていました。
しかし子供をもつことに積極的なダンナさんに、婦人科検診を受けろと言われたり、基礎体温のグラフ記入をするように言われます。
適当に書きやりすごしていたのだけど(ここら辺はさすがにちびまるこちゃん!)ある日突然吐き気を催して妊娠が判明!
この腹の中に大便以外の何かがいる!
そこで病院で診察してもらったのだけど、最終月経をもとに出された予定日にさくらさんは疑問を持ったのでした。
赤ちゃんはお腹に「十月十日」もいない!
出産予定日が、さくらさんが思っていた「十月十日」から考えた予定日より1ヶ月も早かったんです。
実は私もそれ、大いに疑問を感じたんでした!
この「十月十日」って言葉、受精後から数えるのかと思ったら、最終月経の1日目から数えるんですって。
そこから28日周期で1ヶ月ずつ多くなっていくんです。
だから、思ったより生まれるの早いじゃん!てなると思います。
私の場合、長男は1ヶ月近く早く生まれたので、お腹に入っていたのは約8ヶ月間!
「私のお腹に十月十日もいたのよ・・・」
ってドラマとかで言ったりするけど、いやそれ、卵子だけの状態も入ってるから!ってツッコミたくなりますね〜。
妊娠期間の不調から全宇宙の話まで広がった!
実はかなり個人差のある妊娠中の心身の状態。
さくらさんは吐き気はそこまでなかったものの、食欲不振と精神的な落ち込みがひどかったようです。
「まるこも友蔵もヒロシもどうでもいいけど、締め切りは守らなくてはいけない責任に泣けた」
と書いてありました。
そこから次々に自分の仕事に疑問が湧き、「今死んだらこの憂鬱な気分はどうなるのか?」ということにまで発展します。
といっても「死にたい」というわけではなく、「自分が死んだらどうなる?」ということを深く考えたようでした。
<さくらさんのたてた仮説>もし魂が肉体とは別のエネルギーで構成されているとすれば・・・
今の(さくらさんの)魂の状態=厭世観で波打っている
→その波動は宇宙空間にまで拡散し、いずれは消滅していくはず
→とはいえ、様々なエネルギーで充満している宇宙ではなかなか波動が静まらない
→つまり、全宇宙が静止して全て無になるまで逃れられない!
という壮大な仮説をたてて、がっくりするさくらさん。
スケール大きすぎ!ヾ(・ω・`;)ノ
でも・・ただひたすら不調に耐えるしかない辛さはわかる気がします。
肉体的な辛さ、そして精神まで影響あるんですよね。
私の場合はつわりはほぼなく、3人の妊娠中、吐いたのは長女の時の妊娠判明前の1回だけでした。
あとはなぜかゲップが出たり、ムカムカする感じが続いたり・・・。
え?つわり軽くない?
って思う人がいるかもしれません。出産するまで吐き気が続く人もいることを考えると確かにかなり軽いですよね。
でも、どうしようもないだるさ。
食事したあとは特に、手の先が痺れるような、まるで睡眠薬を盛られたかのような睡魔。
酸欠になりそうな鼻づまりや便秘。
なぜまだ数ミリ単位の生命体が現れただけで、こんなにもすべてが変わるんだろう?
っていうような急激な変化の荒波にただ日々耐えるしかありませんでした。
ちなみに吐きはしなかったものの、長男の妊娠4〜5ヶ月目くらいは食事が砂みたいに感じましたね。
そして徐々に変わっていく体・・・。
あまり具体的に言うのも気が引けますが、おへその下から一直線に筋が入ったようになって驚きました!
それ、妊娠線ていうんです。
なんだよー!この筋?消えるのかな〜?
(と思いましたが、今はもうほとんど目立ちません。)
「筋くらい」なんですけど、なんだか「動物」って気付かされたような気がして気が滅入りました。
よく「女性はお腹に赤ちゃんができた時から母になる」とか言いますけど、私の場合は、刻々と変わっていく体に自分自身の心がついていけませんでした。
(ちなみに急激にお腹が大きくなると、肉割れの筋ができたりもします。肉割れ防止のクリームなども売っているようですが・・。)
でもさくらさんも自分の体に起きる変化に驚愕したようで、
なるほど人の体はそういうふうにできているんだな
と実感したと書いてありました。
さてさくらさんですが、妊娠4ヶ月目からピタリと不調がなくなったそうです!
それは大晦日からお正月に変わったくらいの急激な変化だったらしいのですが、喜んだのもつかの間、今まで陥ったことのない「便秘」に悩まされます。
その後も精神的な不安定さ、全身のかゆみ、体重の増加、お腹が大きくなって靴下がはけない・・・
など色々出てきて、予定日になっても赤ちゃんが降りてこなくて帝王切開が決まります。
帝王切開で「死」を体験?
帝王切開の手術直前「死んだら死んだで死を体験しよう」という気持ちになったさくらさん。
局部麻酔で意識がありながらもお腹が開かれている中、人生の中で最も「死に近い」状態を感じていました。
その時の描写が↓の文章です。(抜粋)
意識が実に生々しくクリアになってゆくのを感じていた。・・・(略)それと同時に、心の方はどんどん静かになっていった。
この世における未練は遠ざかっていき、仕事や大切な人々のことも、何もかも本来の自分とは無関係であり、地球にいた時のみ関わっていた雑事であることを感じていた。
・・・(略)本当の自分とは結局なんだろう。
と続いていきます。
普通は帝王切開では「赤ちゃんと会える」「手術が怖い」くらいしか考えなさそうですが、手術体験から人間とは?というところまで考えて、ついでに盲腸までとってもらうという・・・!
ちなみに盲腸(今では虫垂という)はさくらさんが一度炎症を起こし、その時は落ち着いていたものの必要ないしまた炎症が起きたらいやだとのことで切除したそうです。
(虫垂は実は免疫機能的に大事な役割を持つということが明らかになってきて、最近ではあまり切ることは推奨されなくなってきているようですが・・・。)
一つの体験をここまで味わい尽くすところがさすが!と思います。
本当の自分とは?
「死に近い状態」を体験したさくらさんは、「脳と心、魂は全部別々のもの」と考えました。
魂は”意識”(エネルギー・気でもある)
=自分が自分という”感覚”
この”意識”エネルギーが地球に降りてきて他者と交流するのに必要なのが肉体。
という前提で、脳はコンピューターシステム、心は「意識が脳を利用している状態」だと結論を出しています。
「なるほど、確かに!」と思いました。
さらに生まれた子供を
「家族という教室に”お腹”という通学路を通って新入生が来たようなもの」
と表現していてそれも納得でした。
・・・実は私も不思議なんです。
自分のお腹から現れた子供たちはいったいどこから来たの?って。
遺伝的に体質や脳の構造が似ているのは似ているんですが、魂は別。
私と子供たちは別人だし、私と私の親も別人。
いったいどこから来たんだろう?
今、3人の子供はどの子もかけがえのない存在ですが、そもそもこの世には存在しなかった。
でも、赤ちゃんてすでに何かが宿っているんですよね。
こちらが教える以前に、意思を持っているんです。
確かに「真っ白」な魂ではありますけど、もう「何者か」ではあるんです。
だから本当に、私の体を通って、どこからかこの世界に現れたんだな・・・と思います。
その後もさくらさんは(その当時の)夫と命名で悩んだりしながらも、出産と子育てを通して起きたことや気づいたことを考え、書いています。
なのでこの本は単なる「妊娠出産体験談」ではなく、妊娠という心身の大変化が起きた時に「死」と「生」「自分」などをとことんまで考えたぬいた、一つの哲学書のようだなと思います。
きっとこういう体験は、自分に「死」が近づいた時も考えるのでは・・・。
「死」も「生」も対局ではなくて、表裏一体だから。
なので、死を意識したさくらさんはきっと、また色々と考えていたのだろうなと思うのです。
この本は、出産を控えた人や体験した人ばかりではなく、妊娠・出産に興味ない人も面白いだろうと思います。
自分もこの世に、どこからか生まれて、また還っていくのですから・・・。